永遠などないとわかってる

それでもまだ願ってしまうのは

ストレンジフルーツ 感想その2

恐ろしいほど長くなってしまったので、感想の続きをこちらから。なぜかある文章のブロックがざっくり消えてたので追加しました。



「それはひとりではつくることができない」「一度しかつくることはできない」「それはふたりでつくる」だったかな? プロジェクターに何かを暗示しているような文章。chapter#2 7月20日
美晴からカメラを始めたきっかけを聞かれるカナ。両親が死んで施設で育ったカナは小さい頃夜が好きだった。夜は施設を抜け出せたから。街を歩いていると近くに住む少し年上の男の子と出会い、一緒にカメラで撮影ごっこをして遊ぶように。両親が死んだ時のフラッシュバックが襲ってきて不安で泣いている時はその男の子が「ぼくの作品の、ぼくのカメラの中の作り話の中だから、大丈夫だよ。ぼくの物語の主人公にしてやるよ」と言ってカメラを回して不安を除いてくれた。今や天才ともてはやされるカナにはこの時の撮影ごっこが原点だった。美晴はその定点カメラもハリーのアイデア?と千葉に聞くとなぜかカナが「違うみたいですよ」と答える。美晴の様子から妊娠していることを悟ったカナが事情を聞くと、ここに来てからのことで1億の口をきいてあげるって言われたからと答える美晴。彼女が頼んでいた物を届けてくれた海老沢とのやり取りで相手はこの人だって分かるのだけど、え?父親はアキオさんじゃないの?ってびっくり。そのことも含めての頭にきたからなのかって分かるのだけど。学校のスピーカーからは犬飼の作った音楽が流れ、千葉は犬飼にいい曲だとほめる。犬飼が「いい人だね」と千葉に礼を言うと千葉は「悪い人になりたい」「いい人じゃアートは作れない」と言う。仲間たちと楽しそうにはしゃぐ千葉を見て、こんな千葉もいたんだ・・って少しほっとしたり。久良間がやってきて第1回の品評会(ピクニック)が始まるが、犬飼の音楽を酷評する。千葉にも感想を聞くけれど、その感想如何によっては千葉の評価にも影響すると加えたので千葉はよくないと思うと言ってしまう。犬飼が最初の脱落者になり、品評会の度に脱落していく者を決めていくというルールが決められる。千葉は、犬飼をはからずも自分の言葉で脱落させてしまったから胸を痛めていたけれど、同時に自分が残るには仲間を裏切って脱落させればいいってことも気付いてしまった瞬間だと思う。カナと2人きりになった千葉が「間違ったことしないとおまえに追いつけないんだろう?」と悲しそうに足場に液体をかけるのだけど、その液体はさっき海老沢が美晴に頼まれて届けにきた腐食剤・・。腐食剤を足場にかけたのは海老沢ではなくて千葉だったことが判明するのがここ。でも、美晴を墜落させるつもりはなかったと思うの。美晴が墜落したって分かった時すごく動揺していたし、何をしたらいいかモリシタに聞いて素直にバケツに水を入れていたし。ただ、背中を向けていた千葉がバケツに水を満たして振り返ったら雰囲気が変わってたように思えたので、水道の蛇口をひねっている間にこれはチャンスだって気付いてしまったのかなと。腐食剤をかける千葉にシャッターを切ったカナは「ありがとう」と言う。
カナが覗くカメラのファインダーにはおだやかで優しい表情の千葉が。chapter#1 4月1日
久良間、海老沢のいる校内にアートプロジェクトの参加者が続々と集まってくる。美晴を見た海老沢が久良間に「かわいらしい方ですね」と話しかける。そう!美晴は目を引くほど綺麗。海老沢に目をつけられてしまったことが説得力を増すほど。大好きだった眠れる森の実那子ちゃんが出るんだ!って知ってから余計にこの舞台が楽しみで。華のある女優さんになられていて嬉しかったです。ハリーが久良間に千葉はまだ到着していないか聞いたので昔からの知り合い同士だったことを知るのだけど、冷酷なまでにハリーを脱落させた千葉がそっと涙をぬぐっていたのは親友さえも裏切ってしまったことへの涙だったのかなとも。1年間外部との接触を絶たないといけないために参加者たちは今のうちに連絡を取ることを許され街へ去っていく。海老沢も帰り、久良間だけになった校内に千葉がやって来て、久良間が昔作ってくれた芸術作品のアスレチックにカナと自分は救われたと話し始める。ある時アスレチックに「世界で一番美しい言葉は?」という謎解きと、その答えとしてカナと自分の名前が書かれていて嬉しかったと。ひとりぼっちのカナと一緒にいた男の子は千葉だったのね・・。そしてこの後に久良間は愛する奥さんでストレンジフルーツを作り絶賛されたこと、でもその賞金を1円も使わないで25年間経ったこと、愛する人に支配されたままで生きるストレンジフルーツ製作者の仲間を作りたくてこのプロジェクトを始めたことを話す。それを千葉とカナに託すことも、カナは納得してることも。千葉がひとりになったときにカナがやって来るのだけど、このときだけ前髪を上げるアレンジをしてるカナがはっとするほどかわいいの。曜ちゃんに逢えるかなと思ってやってきた、って無邪気に話すカナがほんとにかわいくて。一歩間違えたら勘違い女かよっぽどの小悪魔かってセリフばかりなんだけどかわいくてひたむきなカナがいました。昔つきあっていたふたりだけど彼女の方が才能があることに耐えられずに別れてしまい、千葉はフォトグラファーを諦めた。カナをストレンジフルーツにしたくないから、自分が一番愛してる人じゃないと作れないとか帰れとか言ってしまうのだけど、別れた時に千葉からもらったカメラで彼を写したら「やっぱりまだ私のこと好きなんじゃん!」て。千葉くんの感情が写ってたんだね。だっておまえが目の前にいるからって言う千葉。見ず知らずの人(海老沢なんだけど)からおにぎりをためらいなくもらって、それがカバンの底でつぶれて中身が出ちゃうようなダサイとこも昔のままだし・・ってもう感情が隠せない千葉。もう心臓がもたないこと、だからストレンジフルーツにしてほしいことを願うと、病院探してどこかの島で暮らそう。死ぬ気で働くからって涙声で千葉が提案するのだけど、その間ひとりぼっちはイヤだと。あたしの心臓ひとと違うから見たくない?に見たくないし俺しか知らない心臓がおかしいとことか他人に見せたくないって拒否する千葉。それにアーティストじゃなくて好きな気持ちしかなくなっちゃう、って・・・。もうふたりのやりとりが切なくて。それでもカナの決意を知ってそれに応えようとする千葉。本当は誰よりも一般人としての普通の幸せを望んだ千葉が、カナの望みを叶えるためには「アーティスト」にならなくてはいけなかった。カナはその才能で必ず最後まで残ることが分かってただけに、どんなことをしても自分も最後まで残らなくてはいけなかった千葉の気持ちが分かったとき、体中の血液が逆流するみたいな感覚に襲われました。だからあんたたちはアーティストじゃないって言ったり、一般人となったかつての仲間に好きなことできていいよなって言ったり、痛みを知らずに本物のアートが作れるかよって言ったり。親友でさえ裏切ることができた「今の俺ならなんでもできる」し、望んでいた「悪い人」にもなれた・・・。又、その決意を痛いほど理解していたカナだから腐食剤をまいた時に「ありがとう」って言ったんだなって。この舞台にあったのはただひたすらに相手を想う純粋な心。カナのために変わらざるを得なかった千葉の決意と優しさに涙が止まらなくて。だからカナの棺の傍に腰を下ろした時にあんなに寂しさや悲しさを湛えた背中だったこともやっと理解できて・・。千葉が完成させたプロジェクションマッピングが仲間全員のアートを融合させたものだったからも分かるように、本当は仲間を大事にしたかったんじゃないかなと思うし。冷酷な時もちょいちょい素の優しさが出ちゃって、妊婦の美晴を気遣ってストレンジフルーツを見ないほうがいいって言ったり。自分を殺してまで好きな人のために生きる強さと優しさが、冷酷でクールな千葉を演じきれてたからこそ際立ちました。再会した時にちょっとヘタレな部分もあっただけに(わたしは優しくてヘタレ役よりも少し陰があったり黒いまっすーの方が好きです。今回の舞台でドラマ「喪服のランデブー」をまっすーで見たいって気持ちが更に強まったし)。まっすーが会見で言っていた「見終わった後にあたたかい気持ちになれる作品です」の言葉に納得。君に私を焼き付けたい、と言うカナに定点カメラをセットしてちゃんといっぱい写れよと言う千葉。だからか・・! カナはそのカメラが向いている大きな木の下に必ずいた。ちゃんと最期の時まで千葉のカメラに写るように。美晴がハリーのアイデアかと聞いた時も違うみたいですよって即答したのも誰がセットしたのか知っていたから。俺と別れてから名前を呼んでもらってないだろうから、俺が呼んで(生きている間に耳にする言葉の)1位にしてやるって言った時に何度もカナって連呼してた理由も判明。私の匂いを覚えてる?に「春の匂いがする」って答える千葉。春が来るたびに私を思い出してね、とカナ。だけど春はカナが死んでストレンジフルーツに自らの手でした季節でもあるのだから千葉にとっては決して忘れない切なすぎる季節になってしまうのよね。カナは・・・あの白いドレスはやっぱりウェディングドレスのつもりだったのかな。永遠の愛を誓うつもりで。カナにとっては春は幸せの記憶のままなのかもしれないけれど・・。覚えてて、の中にちゅーもあるのだけど、カナの頭を引き寄せて髪から肩をそっとなでる千葉くんの左手がひたすら優しかったのを書いておきます。そしてまた、かつての仲間たちは夢破れて思い描いた場所とは違うところにいるけれど、ちゃんとひとりひとりに居場所はあるんだってこともこの舞台で印象に残ったことも。カナでさえ「ここにいていい?」って千葉に聞いていたから自分の居場所に不安を持っていたのかな。又、カナの「死」に対して言葉を発したのが「生」をこれから授けようとしてる美晴だという対比も印象的でした。
「ぼくの作品の、ぼくのカメラの中の作り話だから大丈夫だよ。ぼくの物語の主人公にしてやるよ」「よーい!アクション!」
これから過ごす1年間はすべて、その結末でさえ「ぼくのカメラの中の作り話だから大丈夫だよ」とカナを安心させてあげるように千葉はカメラを回したんじゃないかな。あの頃と変わらない想いでカナを見つめてあげるように。1年後の4月1日にカナが主人公のこの物語が終わりカメラを止めるまで。
会場をでて看板を見上げるとまるで十字架を背負ったことを象徴してるかのようなクロスペンダントをしている千葉とカナが。携帯の電源を入れようとカバンを開けたらグッズが目に入った。ストレンジフルーツの舞台をイメージしてまっすーがデザインしたそのミラーにはイメージカラーのブラックに赤やピンクのたくさんのハートが。愛情に溢れていた舞台を思い出してまた泣きそうになった。