永遠などないとわかってる

それでもまだ願ってしまうのは

ストレンジフルーツ 感想

東京千秋楽おめでとうございます。すっかり千葉中毒患者です・・・なんせ放置しまくりのブログに戻ってくるほどですからw 久しぶりすぎてログインの仕方を忘れてました・・・
東京楽も迎えたのでネタバレがっつりの感想を。あくまで舞台初心者の一方的な感想と解釈です。もちろん芸術に明るくはなく、時間軸と逆に進む舞台に沿って感想を書くので見てない方には???ってこともあるかと思いますが(文章力の問題もあるけど)率直な想いを続きから。2回観劇させていただいたのだけど、セリフ等は年寄りの脳内でニュアンスで覚えてるだけなので違うところもあるかと。
初めて観たときの、最後の謎解きのピースが合った時の全身の血液が逆流するような感動が今でも忘れられない・・・とにかくまっすー、いや千葉くんがほんとにほんとによかったーーー!!!!!



まずモチーフとなっていたザクロを見て、昔読んだザクロは血の味、人間の味っていう鬼子母神伝説の話を思い出し、それに加え

ただそれを作るため、すべてを犠牲にしてもいいと思った。
逆流する記憶の中で最も確かな記録は五感に残る彼女の感触。
その姿も声も匂いも、胸の鼓動も。今はすべて僕だけのもの

というフライヤーの文章にもしかして愛するカナを千葉くんが手にかけるのかしら・・・とかほんのり思ってたんだけど、実際はもっと深い深い意味がありました。

舞台上はさびれた学校の校門付近の敷地内。校門というより牢屋のような風情。建物の壁に描きかけの絵が。大きな木には何着ものドレスと、これから首を吊るんですね・・って確信しちゃうロープもつるされてます。チャイムが鳴ると同時に何かに追われるように走って登場する千葉くん。いきなりすぎる!!細い!!!背中が逆三角形!!!かっこいい!!!ってもういきなり私の中でクライマックス(早すぎ)。無言のまま木の方を見ているとウエディングドレスにも見えるような白いドレスとヘッドドレスをつけたカナがこれまた無言でやってくる。この時の千葉くんを見つめるカナが泣いているのか微笑んでるのかよくわからない表情に見えて。そして予想通り千葉(以降敬称略)の目の前で首を吊る。見つめていた千葉がPCを操作すると、まずカナの心臓が赤く鼓動するのから始まり、描きかけの絵が完全な菩薩像となって現れ音楽も融合したプロジェクションマッピングがあたりを包んでいく。それはかつての仲間が言っていた、みんなのアートを合わせたいという言葉を具現化したのでは・・?って気付くのはこれより後のシーンでなのだけど・・。プロジェクションマッピングが終わり闇と静寂があたりを包むと千葉の悲しい叫び声だけが響いて。突然現実に引き戻された絶望のようにも、やっと本音を吐き出せたようにも聞こえた千葉の叫びに胸が締め付けられた序幕。
暗転の中、舞台いっぱいのプロジェクターに登場人物の映像が映されます。このプロジェクターの映像はチャプターごとにも流されるんだけど、時間軸を遡る上ですごくいい! 舞台では描ききれない1年間の「チャプターごとのアーティスト達の様子」が映し出されてて。こんな優しい表情をしてた千葉もいたんだ・・ってほっとできたり。そしてchapter#5 4月1日の文字。
カナが自殺したと聞いてみんなが学校に集まってくるのだけど、かつての仲間−脱落してここを追われた人たち−に千葉は冷たく「あんたたちはアーティストじゃないんだから」って突き放すだけ。この時「お前も!お前も!」って大声で指差しながら言うまっすーの目の表情が、我が子を食らうサトゥルヌス(ゴヤの方)に見えてぞっとした。何かにとり付かれたような狂気の表情に。期間は1年間、報酬は1億円のアートプロジェクトから脱落した仲間の今の職業を聞いて「好きなことできていいよな」ってクールに言い放つ千葉。頑なにアーティストと一般人を分けるのはなぜ?って思いながら、プロジェクトの勝者なのに嬉しそうなわけでもなく、冷酷すぎる言動と、なのに棺の傍らに座ったら背中が悲しみを湛えている千葉に戸惑いも覚えながら、見てました。この言葉にそんなに深い意味と重みがあったなんてこの時はもちろん知らなかったからなんだけど。この舞台は時間軸が逆に進むから、違和感や戸惑いや疑問が次第に解き明かされるのだけど、ひとつひとつの答え合わせが切なくていじらしくて・・・。1億の報酬を得た、カナを使った作品「ストレンジフルーツ」を見せろって要求に「だったら覚悟を決めて見ろ」と言ってビデオカメラを覗く千葉。棺に収められた作品を見て皆が息を呑む中「綺麗・・・!」って言ったのはここで妊娠して今は臨月の美晴。その言葉を聞いた千葉は「カナ!カット!OK!」と叫んで365日回し続けていたカメラを止める。
プロジェクターには狂気じみた表情で学校の廊下を歩く千葉が。手にはナイフ。2回目で気付いたのだけど、ここでカナが千葉を見つめてたの。変わっていく千葉をただそっとずっと見つめてたんだ・・って泣きそうに。ナイフはザクロを切ったりと象徴的な映像もあるけどここも逆回しなのに感心しちゃった。chapter#4 1月1日の文字。
プロジェクトに残っていたのは4人。映像作家の千葉、フォトグラファーのカナ、千葉と共同制作者のハリー、デザイナーのモリシタ。このアートプロジェクトを提案した久良間がやってきて「ピクニック」と称する今回の脱落者を決める作品の品評会を始める。ピクニックなのでサンドイッチを食べるのだけど飲み物もなく食べるからか、PCを操作しながら頬の内側を舌でなぞる千葉くんを見てしまいました。いや、かえって男らしい色気を湛えていたますクオリティなのだけど。モリシタは縫ったドレスを木につるして再生を表してるって言うのだけど千葉から中途半端だと酷評される。このときつるされてた白いドレスがカナの最期の装束になってたんだよね・・。千葉の言葉に挑発されるがままカナにナイフを向けるモリシタ。カナは「いいよ。おいで」って両手を広げてモリシタを受け入れるんだけど、その姿がわたしには教会にあるマリア像にも見えて。結局刺せずに終わるのだけどモリシタは脱落。カナの写真は絶賛される。カナの写真は被写体の感情がそのまま写ると評されているから。共同制作作品のデータが飛んだとハリーに言っていた千葉は、出し抜いてひとりで制作した映像作品を見せるのだけど、完成させるのはもうひとつの別の作品と言う。別の、とはカナの最期に完成したものだとここで知るのだけど・・。提出する作品のないハリーは「ストレンジフルーツ」のことを話し始める。自殺で一番多い縊死死体の胸を開けて人間の果実〜心臓〜を取り出して完成させた芸術作品のことを。そして死体の保存方法の文献も見せる。でもハリーも脱落。冷たく言い捨てていた千葉が、むしろ脱落させるように持って行っていた千葉が、ハリーの脱落が決まった時に目元をそっと指でぬぐっていた。どうして?・・ってこれまた後でわかって切ないんだけど・・・。ハリーは自分のアイデアを書いたノートと文献と「もう一度昔のお前に逢いたいよ」という言葉を残してモリシタと去っていく。カナとふたりきりになった千葉は「カナ。カナ。今の俺ならなんでもできる」って強く言うのだけど。もちろん「今の俺なら」の意味も、ふたりきりになったら突然カナって何度も呼ぶ理由も知るのはもう少し後で。
プロジェクターには美晴をモデルにした菩薩像をスケッチするアキオさんの姿が。chapter#3 10月9日
世界で一番美しい言葉は、その人が生きている中で一番耳にした言葉だと言う美晴。子供がこの空間で遊べるようなアートを作成していた美晴は、アキオさんが校舎の壁に菩薩像を描くために組んでいた足場から転落してしまう。妊娠していたために早急に病院に連れて行かないと危ない状況の中で、校舎の外に出たらこのプロジェクトから追放というルールを知りながら一緒に病院に行こうとするアキオさん。美晴は脱落を嫌がるのだけれど、千葉の思惑通りに美晴とアキオさん脱落。美晴が転落したのは足場の金属に腐食剤がまかれていたせい。外部と遮断されたこの空間に必要なものを届けてくれる市の職員の海老沢の車の中で腐食剤を見つけたアキオさんは、頭にきて海老沢の口をナイフで裂いてやったと言う。それまでこの役者さんはなんでこんな派手にケガしちゃったんだろうって心配してたよ・・。それほど舞台に緊迫感を与えてた傷でした。
・・・て、恐ろしく長くなったんで続きは感想その2に。だんだん薄着になって筋肉や血管やスジが目立つので余計にかっこよく見える千葉くん。役作りで身体を絞ったのも水分量80%も全てが千葉がリアリティを持つためにすごく重要。演技の他に「生きてる」って感じる要素が千葉にはあるのがすごくよかった。「死」への対比としても。